こんにちは。
先日、東京大学工学部の編入試験に受かりました。
ここに、東大編入を目指す人のために、また自分のための備忘録の意味も込め、僕が130日間取り組んだ内容を「東大工学部編入へのまとめ」として記します。
目次
参考書まとめ
※これを全てやる必要はないです。要所要所出そうなとこだけやればいいです。
英語
英単語:
英文法:
| 『例解和文英訳教本(文法矯正編)』
★★★★★
英作文に威力を発揮します。トップダウンな文法書を読むだけでは得られない、細かい知識を得ることができるのでオススメです。 |
| 『理系のための英語論文執筆ガイド』
★★★★★
編入の英語って理系の内容のことが多いので、この本はすげー役立ちました。編入とか関係なく良い本だと思います。もっともっともっと具体例載せてほしいけど。 |
| 『例解和文英訳教本(長文編)』
★★★★☆
上のやつの長文編です。テーマごとに分けられているので、上の赤いやつをやったあと復習がてらとりくむと良いと思います。 |
| 『Grammar in Use Intermediate』
★★★★★
文法書です。一応洋書だけど使われてる英語はかなり平易なので誰でも読めます。やっぱ英語のことは英語で説明された方が分かりやすいので良い本だと思います。 |
| 『Practical English Usage』
★★★★★
これも洋書です。文法書というかなんというか。口で説明しにくいけど、とりあえず英語の有用な知識が項目ごとにいっぱい載っていて、辞書がわりに使えて便利です。 |
| 『表現のための実践ロイヤル英文法』
★★★★☆
良い文法書だと思います。ニュアンス的なことを書いてくれてるのは助かります。ただ、例文がちょっと少なめなのが玉に瑕。 |
| 『一億人の英文法』
★★★★★
覚えやすいシンプルな法則と多様なイメージを駆使し英文法を楽しく分かりやすく勉強することができるなかなか画期的な文法書です。読みやすいので一瞬で読み終われます。学問的な、なんか偉そばって分かりにくい本ばっかじゃなくて、こういう本ももっと増えてほしい。 |
読解:
| 『英文標準問題精講』
★★★★☆
なんだか小難しい英文がわんさか載っている、読解力向上本です。読んで損は無いです。 |
| 『英文解釈教室』
★★★☆☆
マニアックな文法がわんさかです。上の本に同じく小難しい英文がいっぱい載っています。ただ、各文に出典を明記していない点はいただけないですねー。明らかに他で見たことある文も出典無しで使ってたりするのでちょっと常識疑います。 |
その他:
数学
問題集
| 『大学編入試験問題 数学/徹底演習』
★★★☆☆
高専生のバイブルなんじゃないかってくらいみんな持ってます。まぁどうせみんな買うんだろうし、ここではあえて悪口を言っておきます。まず、問題数のバランスが良くないです。難易度もバラバラ。線形代数と、特に微分方程式は全然足りてない。あと解答も微妙なのが多く、たまにミスってる。よって他の問題集も買おう。 |
| 『編入数学過去問特訓』
★★★★★
この本はこの春に出たばかりの新しい本です。でもみんな持ってますねー。『編入数学徹底研究』という編入数学問題集があるのですが、それの上位版という位置づけらしいです。徹底研究が簡単な問題ばっかりで退屈だったのに対し、過去問特訓はA, B, Cと難易度設定がされており、C問題はチョイムズ系なので編入数学の演習にはかなり良い本だと思います。解答も丁寧です。欲を言えば、もう少し問題数が欲しいです。でも貴重な本だと思います。 |
| 『演習大学院入試問題 [数学] I』
★★★★☆
「線形代数」「微分積分」「微分方程式」から成ります。パッと見分厚くていかついです。組版もちょっと見にくいです。しかし、問題のレベル的にはちょうど良い感じなので、是非やるべきです。問題数も見た目の割には多くなく、(必要範囲にだけ絞れば)2週間もあれば普通に終わらせることができます。 |
| 『演習大学院入試問題 [数学] II』
★★★★☆
上のやつの続きです。「ラプラス変換、フーリエ解析etc」「複素関数」「確率」からなります。これも必要範囲だけ拾ってやればいいと思います。 |
| 『明解演習 線形代数』
★★★★★
線形代数の問題集です。かなり網羅してます。 |
| 『明解演習 微分積分』
★★★★★
微分積分・微分方程式はこれさえやってれば割といけます。 |
| 『明解演習 数理統計』
★★★★☆
確率の問題と、確率変数の問題だけやるために使いました。まぁ良い問題集ですが、確率はこれだけではちょっと物足りないです。 |
| 『常微分方程式例題演習』
★★★★★
図書館で偶然見つけました。微分方程式はこの1冊あれば完璧です。なんで絶版になってるのか意味が分からない。 |
| 『複素関数例題演習』
★★★★★
上のやつと同じシリーズの問題集で、これも図書館にありました。複素関数もこれ1冊で完璧です。 |
教科書
| 『線形代数入門』
★★★★★
線形代数の良い教科書です。受験を始める前まで線形代数がイミフだったのでこれを2, 3回読みました。 |
| 『解析入門I』
★★★★★
同じく東大出版の解析の教科書です。正直抽象的すぎるところが多く、僕は適当に分からないところだけ拾い読みして使いました。 |
| 『解析入門II』
★★★★★
上のやつの続き。ベクトル解析とか複素関数とかも出てきます。この本にのっている例題が何年か前の編入試験に出題されてました。そういう意味でも東大出版の教科書に目を通しておくのは得策かもしれません。 |
| 『理工系の数学入門コース 3 ベクトル解析』
★★★★★
ベクトル解析はこれ読んどけば大丈夫です。 |
| 『理工系の数学入門コース 7 確率・統計』
★★★★★
確率はこれを読んで、あとは適当な問題集で色々問題を解けば大丈夫です。 |
| 『なっとくする複素関数』
★★★★★
すげー納得できました。 |
物理
| 『演習力学』
★★★★★
力学はとりあえずこれをやりました。適度な問題量で復習ややり直しに最適です。 |
| 『熱・統計力学演習』
★★★★☆
熱力学はやること少ないけど一応これやりました。 |
| 『基礎物理学演習』
★★★★☆
色々載ってます。僕は時間が無かったので電磁気のとこだけやりました。 |
| 『名門の森物理 力学・波動』
★★★★★
大学入試の問題集ですが、やっといて良かったです。 |
| 『名門の森物理 電磁気・熱・原子』
★★★★★
同上 |
| 『詳解 力学演習』
★★★★★
開けるとめまいがするような組版ですが、本当に色々載っています。僕は時間がなかったのでとりあえずパラパラと眺めました。 |
| 『詳解 電磁気学演習』
★★★★★
同上 |
勉強方法まとめ
本格的に受験勉強をはじめたのは5年の春休み(3月)からです。つまり受験前約130日間頑張っただけなので、準備期間は結構短い方だと思います。てか絶対足りてなかったw
【参考】受験勉強を始める前後の状態:
- 学校の成績:
- 英語:
- TOEIC 875(4年生1月)
- 英検準1級(4年生10月)
- TOEFL iBT 83 (5年生4月)
- 数学未習範囲:
- 線形代数ほぼ全部(一応既習だが全然理解してなかった)
- 一般線形n階微分方程式(定数係数以外やってなかった)
- クレーローとかラグランジュとかの微分方程式(なにそれ状態)
- 完全微分方程式(初耳やで)
- 複素関数の実積分への応用の、有理関数や三角関数など以上の内容
- ベクトル解析全般
- 物理未習範囲:
なんか、どこにでもいる平凡な高専生という感じですね。
以下、各試験科目ごとに傾向と対策を詳しく書いていきます。
英語
例年の試験問題:
- リスニング (結構ゆっくり)
- 英文和訳 (微妙に長くて面倒くさい)
- 和文英訳 (一見小難しい和文の単文もしくは2文くらいのが3, 4問)
- リーディング (科学系の読み物的な文章が多い。文章自体は平易)
- 自由英作文 (年によってやらされる内容はバラバラ)
東大の英語は、文章レベルはそんなに高くなく、とりあえず
テキパキと処理ができればいいという感じです。TOEIC 800ちょっともあれば感触的には(点数はさておき)割と余裕だと思います。
リスニングは、かなーりゆっくりです。しかも2回も放送してくれるので、簡単な方だと思います。長いので眠くなります。対策は特に必要ないと思います。ちなみに、過去に編入した人たちは『
キムタツの東大英語リスニング SUPER』などをやっている人が多い感じです。リスニングが苦手な人には良さげです。僕は通学時間暇だったのでiPhoneのStitcherというアプリでABCとかBBCとか聞いたり、アメリカのTVドラマをiPhoneに入れて通学中に見たりしてました。
東大を考えているような人なら和訳はフィーリングでいけちゃうと思います。練習して
スピードさえ上げとけば大丈夫でしょう。しかし英訳はやっぱり(ネイティブじゃないし)よく分からないので『
例解 和文英訳教本(文法矯正編)』をまずやりました。その後ブルーバックスの『
理系のための英語論文執筆ガイド』を読みました。どちらも超オススメです。
リーディングも毎年平易な文章しか出ないので、普段から英語で興味あるものを読んだり、TOEFLの勉強したりしていれば読解自体は大丈夫です。とりあえず『
英文標準問題精講』を一通り読めば楽勝です。
過去問を読んで難しすぎるかなと感じる人は、まずは『DUO 3.0』『TOEIC TEST 英単語スピードマスター』、『TOEFL TEST必須英単語5600』などで基本的な語彙を増やし、『一億人の英文法』、『表現のための実践ロイヤル英文法』、『Grammar in Use Intermediate』など良い文法書を読んで文法知識を定着させましょう。ちなみに、『DUO 3.0』はほぼ全員が受験前にやるので、周りからアドバンテージをとりたければ3年生か4年生の前半くらいまでに終わらせとくと良いです。
TOEFLといえば、僕は滑り止め(?)に京大も受ける予定だったので、ほんのちょっとだけ勉強しました。『
BARRON's TOEFL iBT 13th edition with 2 audio CDs & CD-ROM』というのを少し読んで(解いて?)対策しました。本番をシミュレーションできるソフトが付いてるのでオススメです。京大も考えている人は是非是非。
自由英作文は毎年気まぐれで出題され対策のしようがないので、普段からある程度は英語に親しみ、色々な話題に触れていくことが理想かなと思います。
以上まとめると、「受験に向けて」とかではなく、
早めの段階で英語の勉強をはじめておくと良いです。高専生は基本的に英語ができない人種なので、受験では英語がキーになると聞いたことがあります。3, 4年生のうちにTOEIC 750程度はとれるくらいにしておくと楽です。試験直前を英語に時間とられるなんてもったいないし。
数学
過去問に見る出題範囲:
- 微分方程式(一般の二階微分が出たり、解の近似が出たり、去年まではちょっとメンドイのもちょくちょく出ていました。今年はアホみたいに簡単なやつでした。)
- 確率(一応高校の数C範囲で大丈夫。東大は確率過程が好きなのかな。)
- 複素平面と図形(一次分数変換、複素平面を用いた平面幾何)
- 複素関数(複素積分の実積分への応用)
- 線形代数(ジョルダン標準形まではやらなくても、まぁ大丈夫)
- ベクトル解析
- 立体図形(重積分で体積求めろとか)
- フーリエ級数←New、フーリエ変換 (最近は出ないと思ってガン無視してたのに急に出た。簡単だったから良かったものの。)
当然ですが、まずは上記範囲へのちゃんとした理解が必要です。
一通り理解した後、上にある問題集をローラー作戦でつぶして(1週目)ミスったところを解き直し(2週目)それでもミスったところを解き直し(3週目)しました。
東大の数学はたまに「時間内にできんの、これ」みたいなのがあるけど、あとは基本問題が多いと思います。東大ということを考えるとかなり易しい方かなと思います。高校生が受ける二次試験のような、クネクネ考えさせられる問題は少ないです。
ただ、受験勉強始める前は若干「果たして時間内に全部解き終わるかな?」と感じていたので、とりあえず
スピードを鍛えることが重要だと思います(ちなみに試験時間は2時間30分、問題数は大問が5つです)。そのために僕は、数学暗記カードを作り、色々な公式や計算方法(e.g. 微分方程式の解法、複素積分の積分路の取り方、置換積分の変数変換の定石、その他証明や計算に便利な定理や公式)を暗記してすぐ思い出せるようにしました。普段から真面目に勉強して基礎がある人ならこんなことせずとも問題ないと思う。僕は不真面目だったのでちょっとしんどかったです。
とりあえず基礎をしっかりしとけば数学は大丈夫です。
物理
例年の試験問題:
- 力学 (質点の力学、剛体の力学など。解析力学までは出ない)
- 電磁気学 (極板をつなげたりつなげなかったりするコンデンサ問題、インダクタンスがどうちゃら、傾斜をつけた平行レール上に導体棒をのせたりする電磁誘導系など)
- いろいろ(熱力学、波動、電磁気学(電磁場中の電荷の運動とか)、稀に現代物理)
僕のネックは物理でした。マジでヤバい状態だったので、まずは大学生用の演習書を要所要所(『
演習 力学』の解析力学以外のところ、『
熱・統計力学演習』のエントロピーまでのところ、『
基礎物理学演習』の電磁気のところ)をこなしました。これは授業などで勉強してきた内容を思い出すためです。
最後に、『詳解力学演習』『詳解電磁気学演習』という、読む気が失せるような、アリの這うが如く小さい文字でギッシリと物理の問題が大量に載っている、まるで「問題辞典」みたいな問題集があるのですが、これをパラパラと流し読みし、見たことの無い問題や、気になる問題をチェックしました。時間があれば全部解けばよかったと思います。
まぁ物理は結局本番で派手にミスったのであまり何も言えませんが、とりあえず全範囲をちゃんと理解し、色々な問題に触れて本質をつかむような勉強をすれば理想なんじゃないかなーと思いました。とにかく早めに勉強始めよう。
現代物理やるかやらないかって結構デカいと思うけど、どうなんだろう。一昨年までほとんど出ていなかったのに、去年はコンプトン効果が突然出たし、今年もシュレディンガー波動方程式が出た。この流れでいけば、来年からも出るのだろうか?それともさすがにもう出ないかな?分からないけど、やっといて損は無いんじゃないかな。
まとめ
数学は高専生なら短期間で間に合います。物理は十分に勉強するには1年くらい必要な気がします(まぁ物理好きな人はどうか知らんけど)。英語は低学年のうちから人より少し頑張ることで有利になります(受験前に数学と物理に集中できる)。
全体的に、東大工学部編入試験では「難しいものをこねくりまわして考えられる」ということよりも、「
基本的な内容をテキパキ素早く処理できる」ということの方が大事なんじゃないかなーという気がしました。問題の難易度はそんなに高くないので、それらを時間内にしっかりと解ける要領の良い人が受かるんじゃないかなという印象です。
受験の感想
- 英語:難易度は多分例年通りか少し簡単かくらい。内容は社会科学系のものが中心だった。
- 数学:かなり傾向が変わった。でも確率以外は易化。
- 物理:力学死んだ。電磁気余裕。量子力学白紙。つまり絶望。
運の悪いことに今年から傾向が変わりました。物理は死にました。だから絶対落ちた!と思っていました。でも何故か受かってしまいました。とりあえず超ラッキーです。
受験勉強はできるだけ早めに始めた方がいいですよ。今思えば最低1年、いくら遅くても年明けからはやっとくべきでした。春休みからやればいいというのは甘かった。まぁ結果オーライなんだけど。
というか、なんで機械系は物理ないくせに情報系が物理やらなあかんねん! 他の大学の物理は簡単なのに東大だけなんかちょっと違う。物理の分を数学にまわせていたら数学最強になってただろうに。でも合格者14人中物理受験者が12人もいたということは一体どういうことなのか(受験者104人中物理受験者は42人だけ、つまり物理いらない組の方が多い)。物理取ってる方が受かりやすいのか。。。それとも物理も他もできちゃう天才クンがたくさんいるということなのか。。。まぁいいや。
以上、高専から東大に編入するためのまとめと、受験した感想でした。
P.S. 過去問なんて全然あてにならないものだー :(